消して描く

  • 2008.10.29 Wednesday
  • 15:39
 

 建築や土木用語に、「スクラップ&ビルド」という言葉がある。その意味に、再生・生き返り・輪廻転生の意味が込められているのであろう。絵を描く現場でも、そのことは、同じくいいあてられる。 

 「せっかくここまで描いてきたのに」と初心者はなおしたり壊したりすることに、臆病だ。それは、経験のなさでもあるのだが、ダメなものはダメと修正をかけると、大方はよくなる。早ければ早いほどいい、偽装隠しとおなじで、隠せば隠すほど悪くなる。 

 では、壊したり、修正したり、直したりするのがいいなら、最初からそのつもりで描いてもいいのでは? 実は、その手法はちゃんと存在する。一つの行為・アクションにもつながるやり方だ。コンセプトがしっかりしていれば、図柄は見えなくても絵になっていく。 

 さて、この絵は水曜夜クラスの笹川さん。紙のコラージュをしながら、絵の具をたらして、墨汁による線描で人物を描いている。それを何度も繰りかえしているので、いろいろな重なりが作業工程と時間を醸し出します。 

 写真を撮った時点は壊してつぶしたところ。さてどんな絵になるでしょう? 

どう料理してやろうか

  • 2008.10.27 Monday
  • 15:38
 

 我がクラスの最長老、土方さんの風景画です。一週間たつと、もう新しい作品を数枚アトリエに持ってきます。へたな絵描きよりは、事実多作です。老人はヒマだと言って、いろんなところでスケッチをしてくる。 

 毎日毎日制作することは素晴らしく、頭が下がります。しかし、残念ながら、どこにでも絵になる景色があるわけではない。そこで、どうやって絵にするか、だ。 

 よくあるのは、有名どころの建物を描く機会。気をつけることは、こういうところを描きましたという記念的説明画にならぬこと。パンフレットの凡例写真ではダメ。この建物をどう料理してやろうかと、切り口・山っ気が必要です。(静物画だって同じことです) 

 さて、この絵は浦安の一角らしい。ハッキリ言ってきれいな川ではないだろう、たぶんコンクリート張りのよどんだ川か。そんな川とともに、赤い屋根と緑の樹木。う〜〜〜ん絵にならん。と方策を考えました。 

 やったことは、「土方さん、ちょっと季節マエダオシして、紅葉させましょう」ということで、赤つながりの絵でなんとかなったかな。 

器用という苦あり

  • 2008.10.22 Wednesday
  • 15:37
 

 水曜午後クラスの佐藤さん、初めての油絵です。(2日目)きれいな鉛筆デッサン同様の清楚な始まりです。 

 清楚というのは、朝の光を連想させる。そして、白のストライプが現代的な朝食スタイルを感じさせるので、バックの色が検討事項だ。初めての油絵で、ササッとこんな感じで描かれると、講師はいまのところ何も言うことがないので、ちょっとつまんない。 

 普通は、もっと絵の具をのせてみて! ぜんぶに手をいれて! 今描いているものは、後で消えるから大胆に! と、経験を積ませることが主なる目的になる。「いまのところ何も・・・」とは、そのうち、「私の絵なんだか、つまらなくありませんか?」となる。 

 そのとき、「さて、絵にタマシイを入れよう!」と試行錯誤が開始される。苦しみのはじまりだ。もっと!もっと!と鼓舞されて描いた絵は、それなりに時間の経過の面白さがあって、見ておもしろい絵になる。 

 器用な人は、それなりに苦しむことになる。でも、初めての絵にこんなこという言う講師はいないね。言い方かえよう、「苦しむけれど、楽しいことがあるよ!」 

いいね、北海道

  • 2008.10.20 Monday
  • 15:35
 

 またひとつ、北海道旅行の絵が仕上がりました。作者は野上さん。この赤く染まる草紅葉を描くのが第一なのだけれど、描き始めは空を広く構成した。 

 実際、北海道の空は広く、とても印象に残るのだけれど、今回の地上の草紅葉の密度に対して、空が軽くて持たなかったのだ。地面も空も両方を求めたことになる。やはり地面のひろがり重視でいかなくてはならない。 

 僕はてっきり牧草のロールケーキぐらいしかないと思っていたのだけれど、皆さんの写真を見ると、秋の草花全盛期という感じ。いい時期に行けてよかった。北に行けば行くほど、色鮮やかな景色に遭遇するというのは面白い。 

 北国は暗いという、先入観をお持ちの方は、一度旅に出てください。とくに春と秋は、短い期間で一度に変貌する凄さを感じられる。というより、実はヨーロッパ諸国と同じ緯度で、園芸に適した気候なんです。次は冬の北海道だね。いいよー! 

落ち着かないらしい

  • 2008.10.15 Wednesday
  • 15:34
 

 中森さんの描き始めの作品です。今日の終わり際に「落ち着かなくて・・・」との発言があって、取りあげることにした。 

 いつもの通り、物の量感より形のシルエットの組み合わせによる絵です。では、何が落ち着かないかというと、色の明るさと彩度の高さらしい。生来のスモーク系で黒派の中森さんにとっては、こんなもんでも落ち着かないらしい。 

 黒派の作品の中でも、ただ燻されただけでなく、その中で気持ちが軽くなるような作品が出来ないだろうか、が最近のテーマだろうと思う。制作の過程で、落とし所のトーンを見つける仕事が続いている。 

 さて、このように落ち着かないという感覚は、自分を知ることになるのでとても大切だ。物を作る動機は2種類ある。一つは、自らの体質・本質による渇望・欲求。2つ目に、あこがれによる盲目的な欲求。 

 2つ目のあこがれ動機の例は、「可愛らしいメルヘンチックな絵を描きたいと思いはじめたものの、自らのドロドロした体質を知り、落ち着かなくなる。」のようなこと。いろんなパターンの作品にトライすることで、今後いっさいこのような方向性の作品を作るのはやめよう!となれば幸せなことです。 

 だから、最初のうちはいろんな絵を描いていい。そして、「○○さんの絵だよね」と誰もが解るようなことになっていく。やること、やらなければならないこと、が分かり、それが削がれ狭まることは、おおいに結構なこと。 

絞り込む

  • 2008.10.13 Monday
  • 15:31
 

 飯嶋さんの新作が上がりました。最近の水辺シリーズの一点で、苦労を重ねながら、ここにきていい作品になってきた。まわりの緑が写り込む水辺が、キレイな草原ではどうしようもないので、最後におもいっきりグレージングしたら水辺復活。 

 このアングルからもう少し引いてみれば、池の縁が見える。さらに引けばまわりの景色の中の池になる。では、この絵は抽象画か? 今説明した通り、ただ近づいた結果のことですから、立派な具象画だ。(実は抽象画というのはあまりないと考えている) 

 近づいて、部分を切り取ることによって、作品のテーマが絞られて、余計なものがそぎ落とされる。何回も出てくる土門拳の「一歩前へ」に通ずる話である。自分が描きたいものを一番にして、余計なことを省く、実にシンプルな行為がいい絵につながる。 

 なんか、禅問答のようなことだけれど、僕は禅宗の坊さんは絵が描けると信じている。(そういうことにしている)絵を描くにはいろんなルートがあるということ。だって、今からピアノ弾けって言われても・・・。 

ふたたび、色はまわに影響を受ける

  • 2008.10.08 Wednesday
  • 15:25
 

 アイスクラッシャーふたたび、岩佐さんの作品があがりました。一言で言えば「赤つながりの絵」です。トウガラシの赤が壁の中でアクセントとなり目立ってます。その赤が下半分で基調色となり、上下の安定感につながっている。 

 何度もブログに登場している「色はまわりの色に影響を受ける」 このことが、少しずつ理解してきた岩佐さんです。白いクラッシャーの陰の部分にまわりの色を反映させて、光が一番当たってるところを白くすると、おみごと白いアイスクラッシャー! 

 実際と違って描かなければならないのですか? と聞かれれば、実際どおりに描いていないでしょ? と投げ返す。事実と違って、より赤い敷物になってたりで、それは絵の中で考えなくてはいけなくなる。 

 それを作画意識とすれば、色を操るおもしろさに通ずる。それも自由を感じるとき。えっ? 自由を定義せよって? では、「絵画の本質とは、嬉しい・かなしい・おいしい・ビックリ等の感情の表現である。けして、形や量感や奥行き等の事象が第一ではない。あくまでも描き手の感情表現である。その感情に適した色や形を無理なく使いこなすことが出来た時に自由を感じる。」ってこと。 

前途洋々、新しい気持ちで

  • 2008.10.06 Monday
  • 15:23
 

 スイモン画家以降、テーマを絞りきれなかった柳沢さん、新しいテーマが決定しました。「東京湾朝日昇るシリーズ」開始です。今回は記念すべき描き始めをパチリ。 

 取材に行って、現地の美味しい食材を食べ尽くし、さらにうまい酒を飲む。言うことはありませんね、これぞ楽しむ絵画のひとつだ。今後1~2年は楽しめるだろう。我がクラスではこのように自らのテーマを決めて取り組む方が増えてきたのはとてもいいこと。これもブログの成果かな? 

 この柳澤さんの構図ですが、最初は水平線の位置が数センチ上で、手前の岩場の前の水面がもう少し広かったのです。そこを、やはり、太陽と空が主役ということで下げたのです。結果は大成功、ここまで構図ができていれば、すぐ仕上がることでしょう。 

 構図が出来ていないと、どういうことになるか? バランスが悪くていろいろ取りつくろうことになる。たとえば、手前の水面に舟を浮かばすとか・・・。それって、どんどん主たるテーマからそれることになるので、無駄な悪戦苦闘を強いられることになる。 

 ちょっと立ち止まり、いま一度顧みよう我がテーマ。構図はさらに研澄まされる。 

旅から帰ったらすぐに

  • 2008.10.01 Wednesday
  • 15:19
 

 今回の旭川個展に来られる方々に、「なーんにもない。枯れ草のロールぐらいでしょ」と言ってたのですが、美瑛町はまだまだ秋の花が満開で、広大な景色を堪能したそうです。 

 ほんとうによかったと思ってたら、ホレホレ、描き始める方がいるではありませんか! いいねぇー。簡単なスケッチまでしています。先頭をきって描き始めたのは澤田さんでした。皆さんの写真を観ると、絵になりそうなものがたくさんありました。旅の間中、意識してたのでしょう。よしよし。 

 旅のスケッチは、3分とか5分と決めて、それ以上描き込まないのがコツだ。それに、それ以上に面倒だし億劫になってしまってはいけない。慣れるためにも、数分のスケッチを10枚描くことをノルマにするといい。合計30分だ。 

 あとは、スケッチしたところを、数枚以上、近づいたり、違った角度だったり、確認資料として撮っておく。 

 今回の澤田さんは、サムホール。これは正解だ。気張らずに小さいものなら、旅から帰ったらすぐ描き始めることができる。これも楽しむことになるのでは。 

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