二つ、三つ先をイメージする

  • 2009.06.29 Monday
  • 18:29

 川内さんの新作が上がりました。万年雪か氷河か、そこで飲む冷たいワインはいかに?っていう絵ですね。気持ちのよい空気が感じられます。 (ホットワインもいいな)

 青にこだわりがある川内さん、だんだんと青の幅が広がってきたようです。アクセントカラーのオレンジや赤がとても効果的に使われています。このような色はあとで入れては、浅はかな感じがするので、先のことを考えて事前にアクセントをいれておく。その色が消えかかるちょい前で、ちょうどいい加減になるものだ。

 将棋でも、スポーツでも、先を読むというのがある。いつも2〜3のパターンをイメージしておかないとイザという時に話にならない。実は、絵を描く時もおなじことが言える。今日何をやっていいか判らない? それは出来上がっているか、先のイメージができないということ。

 みんなヨクシタイ!と思って描くのだけれど、ヨクシタイというのは表層的な仕上げをすることが多い。これを続けると、だいたい絵がつぶれる。あせらず、現状はどうでもいいから、先にこうしたいから、今これを施しておく行為が大切だ。

 二つ、三つ先をイメージする訓練をしましょう。作品作りに余裕がでますよ。そんなに頑張らなくていいことがわかります。
 

大ざっぱとは

  • 2009.06.24 Wednesday
  • 18:38
 

 土方さんの北海道の積丹半島の絵が出来上がりました。意欲的で大胆な構図に魅力を感じます。おじいさんも捨てたものではありません。アトリエにある中村善策の画集に触発されて旅に出たのだ。「北海道にはいろんな色があった。絵描きが出るのがわかる」とは土方さんの言葉です。

 さて、いろんな色の表現はできたか? 以前から比べれば、驚くほどの色数。見る力、感じる力がついてきている。ここで、さらに色数を増やすにはどうしたらいいか? それは、遠景・中景・近景を意識して色を変えて、その中で色数を増やすこと。どこもかしこも、同じ色を増やしても、それほどの色味はでない。

 このことは、明暗の調子の幅を広げることともいっしょ。最初は、明・中・暗の三つ分けて、それぞれをさらに3段階に分ければ、おみごと9階調!ということになる。最初は大ざっぱに描き始めるということは、大ざっぱ→テキトウということではなく、3段階に分けて考えるということ。

 最初から複雑な色はつくれないものです。大ざっぱの意味をかみしめてください。

経験を積む

  • 2009.06.22 Monday
  • 18:30
 

 石川さん、初めてのアクリル画が上がりました。以前紹介したのは何時だっただろう? あれからずーと続けていたのです。この絵の下には、そのままやれば、完成しただろうと思われる絵が、何枚も隠れているのだ。

 最初は、経験を積むしか方法がない。この世界で、3ヶ月で描けるとか、半年で一人前とか言うのはウソッパチだ。辛い作業だけれど心棒せにゃならん。

 先ず、描き進めて気付くことは、フレッシュな軽やかさとの決別。これだけは、もう戻れない。もう重厚な絵を求めるしかない時に、厚塗り・紙はり・はぎ取りなどを駆使する。この間に、色の響き重視の作風があったり、明暗基調の渋いときがあったりした。

 いつも、このブログでは、方針を決めてとりかかるように言ってるが、やはり最初は経験を積むことが主題。こうやって苦労すると、方針の大切さも理解するようになる。制作時間が長引いた理由は、この細長画面の上部と下部が同じ方針で描いていないからにほかならない。

 絵の中には、一本のルールが必要。よれよれの線ですべて描けば、すべてきちんとした線に見えます。そこに、もし定規で線を引いたらぶっとんじゃう。そんなことを考えながら次作に取り組んで欲しい。この苦労を楽しみに変える時がきます。

描くまえの準備

  • 2009.06.17 Wednesday
  • 18:20

 鈴木さんの夕焼け空シリーズ、新作が上がりました。海辺の広い空がダイナミックに変化していく様子が表現されています。空に動きを感じて、あたかも実際にその場にいたかのようです。けして 写真のようにリアルに描いているわけではないのに・・・。

 その臨場感というのは、忠実なリアルさを追求することではない。漠然とこの風景を描こうとしても、そうはうまくいかないものです。たとえば、その写真があったとしよう。描こうとした動機を忘れれば、ただ単に写真を移すだけの作業になる。写真というのは、余計なものも写っているし、たまたまの構図だったりするから、なおのことうまくいかない。

 描く前に、もう一度、心に留めておく。たとえば、「一つ、空の色の変化。二つ、雲の動き。三つ、逆光のおもしろさ」のように、優先順位をきめてとりかかるとうまくいきます。このことは、制作途中に迷った場合、すべての答えを導きます。

 このように、何を描くか! という命題がしっかりしていれば、妙にリアリティーのある絵になります。ほんとだよ!

ステップアップ

  • 2009.06.15 Monday
  • 18:00
 

 今日は、鮎澤さんを木に登らせよう。ついにハイライトを残すことが出来るようになりました。透明水彩は、白を使いません。だから明るいところは、紙の白を利用することになります。描けば描くほど、色を乗せれば乗せるほど、色が暗くなるのが水彩です。意識して残すことが出来たことが、ステップアップ。次の段階に進んだことの証です。

 暗いところに暗い色を使わなくても、色を重ねながら数回で、目的の暗さにしていくと、色味も増えて、いい感じになるんだ。本物の野菜、フレッシュな感じがよーーく出ています。それに対比するように無機質な包丁がなおのこと効果的だね。

 デッサンにしても、着彩にしても、野菜などの有機的なものを描くことが実力をつける。何を描こうかと迷ったら、野菜を描いていればいい。毎日の仕事にするのなら、何回も言ってるけれど、今夜の食材シリーズなんて最高におもしろい。1年後には、相当の自信をつけることでしょう。

 もうひとつ。今回初めて、余裕をもって時間内に仕上げられたこと。そうです、この作品は今日の午後クラス一回で描いたもの。迷わず、的確な作業を段取りよく進めることが出来たからに違いない。

 今後の作品に期待です。では、木に登っていただきましょう!

バクハツがなんぼのもんやねん

  • 2009.06.10 Wednesday
  • 19:08

 人物ヌードクラスの中尾さんは、たまに昼間にきて、コラージュ作品を作っています。いつもは、自らの精神状態を吐き出すようなドロドロ作品だが、今日は珍しく「梅雨時」とタイトルしてもいいようなものがあがった。その記念にブログに残してあげよう。

 確かに、絵の第一歩は、楽しかった・悲しかった・辛かった・美味しかったなどの感情表現だと思う。もしそのような動機づけがなければ、陳腐なもの・底が浅い作品になる。でも、その精神・感情そのものをドドーーンと出しても、作り手はいいだろうが鑑賞者はたまったものではない。かってにやってくれ!ってなことに。

 僕は、絵画には「知的遊戯」があるべきだと思っている。怒りとはだんだんと怒りを感じるもの。瞬間湯沸かしタイプなんて底が知れている。驚きだって、ジワジワとしみ込むようなものだ。

 表現には、理解と操作がいる。それは、真実が「だんだんとかジワジワ」なのだから「ゲージツはバクハツだ!」じゃ、本質は表現出来ない。渋谷のコンコースの岡本太郎の大壁画を見るにあたり、なんもバクハツもしていないし、理解と操作が施されている。

 こうやって、一般人をだますのだ。ゲージツ家を信用してはならない。

仕上げのプロセス

  • 2009.06.08 Monday
  • 18:24

 柳澤さんの奈良は吉野の桜の絵が上がりました。まことに華やかで、3層の構図もきちんと成り立っています。いい作品です。

 柳澤さんとしては、数週間前にはもう終わりと思っていたことでしょう。最近の我がクラスでは、「とりあえず乾かして来週見てみましょう」というのが合言葉。たぶん皆さんは、じれったいことでしょうね。しかし、ある種の気遣いをするかしないかで、絵は永く見られるものになるかならないかに分かれる。

 この作品を例にすると。
1)桜の塊が似通ってます。グループ分けをして、大きさに大小をつけよう。
2)手前の緑と遠くの山の色の違いをつけよう。
3)桜に薄いマゼンダをグレージングして輝きを出そう。
4)山肌に、桜に呼応するような密度を。
5)山は明るく弱くなったけれど、彩度が高すぎる。
なんてことを、終わり際に、たてつづきにチェック項目が浴び去られる。みんな、ヒーヒー言いながら、やり遂げようとするのだ。

 こんな会話が出来るのも、このブログのおかげ。僕自身、言葉が通じる喜びをかんじているのです。

旅のリアリティー、それはテーマになりうる

  • 2009.06.03 Wednesday
  • 17:53

 もう少しで完成。服部さんのバリはウブドのライステラス。圧倒的な緑を表現しようと頑張っています。緑が単調にならないようにするだけで、大変な労力だ。ちまちまいろんな緑をそこら中に使っても結果は単調になる。いかにグループ分けして、大きな面での色味の違いを求めることが大切。

 東南アジアを旅したことがある方は、お分かりでしょう。あの緑とともに印象に残るのは、地面から湧き上がるような湿気です。アトリエで過去の風景作品を描く時に、このことはとても大切になる。

 痛いほどの陽射し・体ごと飛ばされそうな強風・干上がりそうな乾燥・のぼせてしまいそうな強烈な臭い。このような臨場感ある体験は、制作の味付けに間違いなくなる。形だ、色だ、フォルムだ、コントラストだ、なんて杓子定規に取り組んでいたら、つまんないものになりかねない。描いている本人もつまんなくなる。

 このようなリアリティーある体験は、描く動機付けにもなるし、テーマの中核にもなりうる。個人的体験を使わない手はないさ。

色、結局は白黒

  • 2009.06.01 Monday
  • 18:21
 

 いい作品ですね。野上さんの人物画で、途中です。残念ながら、もうこのような絵ではありません。絵の具のつき方(厚み・デコボコ)が同時にやっていれば、8割方出来てる状態でしょう。オシイ。本人は悔しがるだろうね。

 バック・周りの色は、中のモチーフに影響を与える。と何回も書いています。そのように、バックのパッチワーク柄が、気持ちよく中に入り込んでるではありませんか。そのことで強弱がでてます。

 フォルムの中で強く出したいところと、弱めたいところがありますよね。線を強弱つけたいところと同じです。周りの色が入り込んだところは、コントラストが小さいので弱めたいところとなる。外と中が色が違えば、そこにはコントラストが生じ、前に出てくる。

 では、色の勉強を。オレンジと青は補色対比です。まったくの反対色ということです。これが強いコントラストを生みます。さらにこの組み合わせは、寒暖対比というコントラストでもあります。そして、オレンジと青はオレンジが青より2倍明るい、明暗対比でもあります。

 赤と青緑の補色対比は、白黒にするとぼけてしまいます。なぜなら、同じ明るさだから。色というのは必ずそれ自体に明るさを持っている。色に振り回されるとか判らないという方は、基本中の基本→明暗対比(白黒)を理解しなければならない。

 前回の繰り返しです。白黒デッサンをすることは、日々のトレーニングでもある。

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